goTop

秋田の手しごと、暮らしごと

本サイトは、2012年9月に秋田公立美術工芸短期大学大学開放センター「アトリエももさだ」で行なわれた市民向けイベント「ももさだ祭」の企画として、あきた産業デザイン支援センターが主催した「秋田の手しごと、暮らしごと」展を元に作成しております。

田宮慎 casane tsumugu
湊哲一 MINATO FURNITURE

tamiyaminato1 tamiyaminato2 tamiyaminato3

ふるさとの手仕事と食を見つめ直して

インタビュー
田宮さんと湊さん

人々の想いを重ね、未来へと紡ぐ

2010年4月から「casane tsumugu」を立ち上げ、地域資源を活かしたものづくりや仕組みづくりに取り組んでいる代表の田宮慎さん。大学進学を機に上京し、商業施設の企画設計会社に勤め東京・大阪を中心に多数のストアデザインに携わってきた。その仕事の中で、田宮さんは「地域特有の魅力や個性を活かすことなく、均一的な都市型の開発を進める状況に違和感が芽生えた」という。そこで2009年秋に秋田に帰郷、活動を始めた。
自らを「いわゆるデザイナーではなくて、仕組みをデザインする人」と語る田宮さんは、奥さんの麻友美さんと共に、プロデューサーのような立場で製造業や作り手と結びつき、秋田杉を使用した商品の開発・販売や秋田の「食」に関連したイベントのディレクションなど、多彩な活動で秋田の良さを丁寧に引きだしている。

秋田の伝統工芸と

田宮さんが、大館市の「ZERODATE」をきっかけに出会ったのが、能代市出身の湊哲一さんだ。湊さんは独学で家具作りを始め、現在は神奈川県横浜市で手作り注文家具屋「MINATO FURNITURE」を営んでいる。
「いずれは故郷で家具を作りたい」という作り手湊さんと田宮さんが結びついてスタートしたのが「WAPPA Project」だ。「WAPPAProject」は、地元の資源と技術を活かした新たなプロダクト開発や仕組みづくりを企画・提案し、人と人とのつながりの「輪」を作っていくプロジェクト。その最初のプロトタイプとして、大館の伝統工芸「曲げわっぱ」を活用した「ピンバッジ」「壁掛け時計」「ルームミラー」の3点を製作。二人が試行錯誤して作り上げた商品は現代の暮らしに似合うシンプルで可愛らしいデザインだ。

新月伐採材のフォトフレーム

新月伐採材のフォトフレーム

「WAPPA Project」の他にも、二人が手掛けた秋田杉のプロダクトが、「新月伐採材のフォトフレーム」だ。隙のない木目が美しく、釘などを一切使わず仕上げられた存在感のある印象的なフォルムは、木のぬくもりを触って感じられる。「壁に飾るのもいいけど、見て触れてもらえるよう、食卓とか、暮らしの身近な場所に置けるデザインを意識した」と田宮さん。「釘を使わない伝統的な指物の技術や、無垢の木の質感に触れてもらいたい」という想いが見事に反映された商品だ。材料の秋田杉は、仙北市田沢湖で秋から冬にかけて「新月の日=月が消えている日」に伐採し、そのまま山で春先まで乾燥させるという方法で管理され、非常に手間ひまがかかっている。新月の日には「木は眠っている」と言われ、長持ちするという。自然の神秘への畏敬、秋田の山仕事への想いが込められている商品だ。

曲げわっぱの時計

「秋田の風土を想い」

「地場産業は現場に近く、作り手のことがよく解るから楽しい」と語る田宮さん。「田んぼと畑と山がある秋田の風土が無くならない ように木と食べ物の仕事をし、そんなのんびりしている経済の仕組みが新たに出来ればと考えています。それが誰かの仕事に繋がればもっといいな、と思います」と楽しそうに話してくれた。「いずれは地元に帰って活動したい。土地によって面白みがあるので、横浜とは違う秋田の強みもあると思います」と語る湊さんにも、いずれは近年途絶えてしまった「能代春慶」を復活させるという野望もあるとか。
二人が語る秋田の展望は実に楽しく、のんびりとしている。これからはものづくりの他にも、人と人とのつながりの「輪」を広げていきたい、と語る二人の今後の活動に注目したい。

生駒塗の酒器グラス

田宮さんの暮らしごと 「生駒塗の酒器グラス」

ガラスとの組み合わせが美しい「生駒塗の酒器グラス」。田宮さんが普段から使っている日用品である。「綺麗だし、使いやすい からね」と、ご自身の結婚式では引き出物としても選ばれたとか。秋田を想う田宮さんらしい逸品だ。

木製のスプーン

湊さんの暮らしごと 「木製のスプーン」

普段使っている日用の道具は?と尋ねると、「サンプルで制作した木製のスプーンや、大館曲げわっぱの制作体験で作ったおひつです。木の物が多いですね。」と家具屋さんならではの答えが帰ってきた。

写真

「秋田の手しごと、暮らしごと」展

2012年の夏、あきた産業デザイン支援センターが主催し、秋田県内の作り手やお店を取材、それらを紹介する企画展「秋田の手しごと、暮らしごと-美しい日用の道具と作り手を訪ねて-」が開催され、丁寧な仕事から生まれる日用の道具が展示されました。

新月伐採材のフォトフレーム

新月伐採材のフォトフレーム

Chigiri

Chigiri(ピンタイプ)

田宮慎
湊哲一

注文家具屋 MINATO FURNITURE


http://minatofurniture.com

「美しい日用の道具と
    作り手を訪ねて」

 伝統的な技術を活かしつつ、現代生活に合わせ新しくデザインされたもの。職人の確かな腕が生み出す、スタンダードで長く使い続けられる道具。
 ふるさとの手しごとと真摯に向き合い、作り手を応援するお店。
「あきた産業デザイン支援センター」のスタッフが、県内各地を走り回り、手しごとに関わる人たちを取材してきました。秋田の様々な手しごとの“今”をご紹介します。

記事一覧