本サイトは、2012年9月に秋田公立美術工芸短期大学大学開放センター「アトリエももさだ」で行なわれた市民向けイベント「ももさだ祭」の企画として、あきた産業デザイン支援センターが主催した「秋田の手しごと、暮らしごと」展を元に作成しております。
鎌田祥子 硝子工房窯硝
自分らしいガラスの器
ガラスの変化に惹かれて
「吹き場を見学していたとき、溶けていくガラスに衝撃を受けたんです。あんなにも高温でどろどろした、今まで見たこともないようなものが、完成すると涼しげで透明感があって爽やかな、全然違う表情を見せる。ガラスという素材に強く惹かれました」美術工芸短大出身である鎌田祥子さんは、入学前はもともと陶芸志望だったが、工房で劇的な変化を見せるガラスに目を奪われたことがきっかけとなり、この道に入ることを決めた。
現在彼女が行っている技法は『キルンワーク』というものだ。ガラス炉で溶かし熱いうちに息を吹き込み形作っていく『吹きガラス』とは違い、『キルンワーク』は、ガラスの板や粉、粒を石膏の型に並べ、電気炉(キルン)で熱して成形する。
「吹きガラスは瞬間ごとの判断力が必要なんです。アシスタントも居なきゃいけない。それに比べるとキルンはコツコツやっていくというか…スピードが違うんですよね。1人でもできるし」はじめは両方の技法を使用していたが、作品を作っていくうちに『自分にはキルンワークが合っている』と気がついたらしい。
確かに、にこやかに優しい口調で話す鎌田さんを見ていると、自分のペースで作っていくことができる『キルンワーク』は、彼女にぴったりなのだろうと感じた。
やりがいは「人と会えること」
「作品を見て、『素敵だね』『可愛いね』『欲しいね』と言ってくれる言葉すべてがうれしいです。もっとうれしいのは、行動で示してくれること。何度もお店や展示会に足を運んでくれると、本当に好きで来てくれてるんだと実感できる。仕事のやりがいは、人と会えること。作品がなければ、色々な人と出会うこともできなかった。お店に来るお客さんに『ひとりでやってるけど、さびしくないの?』ってよく聞かれるけど、全然さびしくないんです。お客さんや仕事の繋がりで、色々な人とお話しできますから」
しまったりせず、使って欲しい
彼女の代表作と言えば『いはひプレート』。円の欠けた部分には同じ皿がぴたりとはまる。ぜひとも4枚組で揃えたい器だ。朱と白の色も名前の通りなんともおめでたい。これは特別な日のための器なのだろうか。「特別な時だけというわけではないです。考えた時がたまたまお正月だっただけ。人が集まったとき組み合わせてもいいし、日常で1枚で使ってもいい。使い方はその人の自由ですから」壊してしまうのが怖くて…としまっておくのはもったいない。恐れずどんどん使って欲しい。「食材を盛りつけて『こんな風に使ってます』って写真を送ってくれる方もいるんです。器は食べ物がおいしそうに見えたらいいなと思って作っています」
鎌田さんの暮らしごと 「箸」
盛岡の小民家風のセレクトショップ『necco』で購入した箸。先が普通の箸に比べて細いのが特徴。素材は木で、オイルフィニッシュされているだけのシンプルなものだ。「食べ物を切り分けるときにギッと力を入れても、頑丈で全然壊れません。すごく細いから口当たりもいいし!」何の木でできているのか、誰が作ったのかも分からないが、鎌田さんの食卓に欠かせない、毎日使いのお気に入りの品だ。
「秋田の手しごと、暮らしごと」展
2012年の夏、あきた産業デザイン支援センターが主催し、秋田県内の作り手やお店を取材、それらを紹介する企画展「秋田の手しごと、暮らしごと-美しい日用の道具と作り手を訪ねて-」が開催され、丁寧な仕事から生まれる日用の道具が展示されました。
いはひプレート
銀もようの長皿
硝子工房窯硝
作り手を訪ねて」
伝統的な技術を活かしつつ、現代生活に合わせ新しくデザインされたもの。職人の確かな腕が生み出す、スタンダードで長く使い続けられる道具。
ふるさとの手しごとと真摯に向き合い、作り手を応援するお店。
「あきた産業デザイン支援センター」のスタッフが、県内各地を走り回り、手しごとに関わる人たちを取材してきました。秋田の様々な手しごとの“今”をご紹介します。
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