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秋田の手しごと、暮らしごと

本サイトは、2012年9月に秋田公立美術工芸短期大学大学開放センター「アトリエももさだ」で行なわれた市民向けイベント「ももさだ祭」の企画として、あきた産業デザイン支援センターが主催した「秋田の手しごと、暮らしごと」展を元に作成しております。

萩原博則 萩原製作所

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機能と美しさを兼ね備えた椅子

インタビュー
萩原さん

ものを作るということの意義

もともと家業を継ぐつもりはなく、東京の電子部品メーカーで働いていたという萩原博則さん。しかし、自分で考えてものづくりできる仕事がしたいと思うようになり、26歳のときに帰郷した。
「もっと存在意義が見えるものが作りたかったんです。家具は人が使ってるところが目に見えるし、凝ろうと思えばどこまでも凝ることができる。特に椅子は、人の体重支えて色々な座り方をしてもしっかり固定されていて…、建築よりもある意味高度な構造組まなきゃならない。やり甲斐のある仕事だと思った」新たなスタートを切った萩原さんだったが、幼い頃から自社の家具に囲まれた生活をしてきたためか、ものの善し悪しや意匠の感覚はそれとなく身に付いていた。
初めて手がけた椅子は、今までの自社の椅子からいくつかの課題を見出したものだった。「うちの椅子は全て、加重を分散させるために材料を太く使い、肘掛けもつけることでさらに丈夫にしているんです。サイズも大きい。そういう観点からもっと離れて、ブラッシュアップしたものを作ろうと思ったんです」出来上がった椅子は、最小限の材料で構造を保ち、スリムな脚でサイズも小柄だが、がっしりとした安定感がある。
現社長である父・易雄さんからもアドバイスをもらい、萩原製作所の全てのノウハウが反映された、会心の出来となった。

椅子

工場

家具づくりの楽しさ

新作のオットマンを見せてもらったとき「これ正座で座るとおもしろいんだよね」と意外な座り方を勧められた。試作の段階で、正座で座ると心地がよく、倒れそうで倒れないおもしろさがあることに気づいたらしい。萩原さんはよく、普通とは違う用途を想定しながら椅子を作る。
「全部の椅子にそういうのを意図してるわけじゃないんだけど、作っていくうちに『こういう風に使ってみてもおもしろいよね』って考えちゃう」最初から計算して作ってると、凝り固まったものができてしまう。だから萩原さんは楽しんで作ることを大事にしている。「ヒットを飛ばしたいとか、そういうのは全然ないです。これからもコンスタントに新しいものを作っていきたい。自分が楽しいと思って続けられるのが理想ですね」

萩原さん

一生使うことを考えて

「うちは『使ってだめになったら捨てる』っていう発想はしないんです。買った人がずーっと使い続けていくことを考えてものづくりをするから」数千円で買って3年で壊れる椅子より、数万円かかるけど一生保つ椅子を使ってもらいたい。価格以上の手間ひまをかけてでも、いいものを作ろう。萩原製作所の職人さんたちは、そういった思いの中で鍛えられてきた。「もし、手を抜いて作るよう指示をしたとしても、絶対に聞かないし、できないと思う」職人のものづくりに対する高い意識と確かな腕があるからこそ、うちの商品は生涯で使える家具だと、萩原さんは自信を持って言える。

ペンと万年筆

萩原さんの暮らしごと 「ペンと万年筆」

萩原さんは図面を起こす時、必ず最初に手描きする。そのため、自分の手にしっくりくる筆記用具が必須だ。「これはおもしろいですよ?」次から次へとお気に入りのペンと万年筆を出して見せてくれた。「持ってみてください」と渡されたのは、ドイツの文具メーカー・ラミーのペン。太めのグリップ部分はツルッとしていて、一見すると持ちづらそうだ。「でもこれ全然滑らないんです。バランスとこの膨らみが、手に持った時がっちりなんですよ!機能と、見た目の美しさが一体になってる。これこそがデザインだよね!」萩原さんはそれはもう、文具メーカーの営業マン?って思ってしまうほど生き生きとしていた。

写真

「秋田の手しごと、暮らしごと」展

2012年の夏、あきた産業デザイン支援センターが主催し、秋田県内の作り手やお店を取材、それらを紹介する企画展「秋田の手しごと、暮らしごと-美しい日用の道具と作り手を訪ねて-」が開催され、丁寧な仕事から生まれる日用の道具が展示されました。

ロッキングチェア CorneU

ロッキングチェア CorneU

看板

有限会社 萩原製作所


http://hagiwara-kagu.com/

「美しい日用の道具と
    作り手を訪ねて」

 伝統的な技術を活かしつつ、現代生活に合わせ新しくデザインされたもの。職人の確かな腕が生み出す、スタンダードで長く使い続けられる道具。
 ふるさとの手しごとと真摯に向き合い、作り手を応援するお店。
「あきた産業デザイン支援センター」のスタッフが、県内各地を走り回り、手しごとに関わる人たちを取材してきました。秋田の様々な手しごとの“今”をご紹介します。

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