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秋田の手しごと、暮らしごと

本サイトは、2012年9月に秋田公立美術工芸短期大学大学開放センター「アトリエももさだ」で行なわれた市民向けイベント「ももさだ祭」の企画として、あきた産業デザイン支援センターが主催した「秋田の手しごと、暮らしごと」展を元に作成しております。

藤木浩一 藤木伝四郎商店(代表取締役社長)

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くらし華やぐ樺細工

インタビュー
藤木さん

枝垂れ桜と武家屋敷の城下町

「樺細工は使えば使うほど飴色に変化して美しくなるんです」穏やかに語る藤木さんは角館で220年以上前から樺細工を製造・販売する老舗の6代目。山桜の樹皮を使い独特の技法で磨く「樺細工」は美しい光沢と高い防乾性・防湿性が特徴の秋田を代表する伝統的工芸品。代々続くこの「ものづくり」を継承することを子供の頃から意識していたという藤木さん。大学卒業後は一度百貨店に就職し、施設や店舗の内装工事の営業という異業種を経験した後、帰郷した。それから20余年、藤木さんは樺細工に対するこだわりを「高品質なものづくりを守り続けること、そしてデザイン性を重視することです」と話す。

ティータイムも楽しくする茶筒

「都会に住む30〜40歳の女性のワンルームに馴染むものをと考えました」昨年度発表した新作の「輪筒」のコンセプトを、藤木さんはそう語る。デザインを手掛けた山田佳一朗氏、製作する職人と社長が一丸となって作り上げた「輪筒」は昨年度のグッドデザイン賞を受賞、更に海外ブランドやセレクトショップでの取引も新たに受注し、藤木伝四郎商店の新たな展開を世に示した。伝統の「型もの」技法を用いながらも、従来の山桜の他に桜・楓・胡桃の樹皮を組み合わせた「輪筒」は樺の表情をより引き立たせる斬新なデザインの茶筒だ。女性の日々の暮らしに馴染みながら、豊かな彩りを添えてくれる商品となっている。

店内

海外からの一本の電話

一昨年、藤木さんのもとにパリ在住の日本人女性から一本の国際電話が。それは女性が帰国した際、パリの友人達へのお土産として藤木さんの茶筒を買い求めたところ、大変喜ばれたことに対するお礼の電話だった。「これからも素敵なものづくりを続けて下さい、と励ましてもらいました」その出来事が近年で一番嬉しかったと話す藤木さん。販売先を日本のみならず海外に広げる中であっても使い手の顔が見える商売がしたいという気持ちは変わらない。

「手作り」の仕事を世界中に

藤木さんが語る今後の展望は二つ。一つは、世代別の商品開発を続けること。来年は「輪筒」などのテーブルウェアの他にも新作を発表する予定だ。どちらにも山田氏をはじめとしてデザイナーが関わっている。もう一つは海外輸出の拡大。「大量生産ができない、職人の丁寧な「手しごと』だからこそ、世界中の人々に使ってもらいたいんです」その言葉の裏には職人の数が最盛期の半分以下になった産地への憂いがある。独特の技法を受け継いだ職人がいなくては産地が成り立たない。従来の商品・技法に「デザイン」という「+α」を加えることが、樺細工の伝統の火を守り続ける方法だと藤木さんは考えている。

賞状

100年前の万博

店内に飾られた賞状は1915年(大正4年)に贈られたもの。パナマ運河の開通を記念した「サンフランシスコ万博」でシルバーメダルを獲得したことを証明している。約100年も前から世界と繋がっていた、老舗ならではの歴史といえる。

樺細工のメジャー

藤木さんの暮らしごと 「メジャー」

藤木さんのお気に入りの道具を尋ねてみた。
見せてくれたのは表と裏に樺が貼られたシンプルなデザインのメジャー。「仕事でよく使うんです。何気なく持っているんですが『それ樺ですか?』と結構気付かれます」と話してくれた。国内外を商談で飛び回る藤木さんならではの仕事道具。

写真

「秋田の手しごと、暮らしごと」展

2012年の夏、あきた産業デザイン支援センターが主催し、秋田県内の作り手やお店を取材、それらを紹介する企画展「秋田の手しごと、暮らしごと-美しい日用の道具と作り手を訪ねて-」が開催され、丁寧な仕事から生まれる日用の道具が展示されました。

輪筒(4色)

輪筒(4色)

輪筒(3色)

輪筒(3色)

菓子入れ

菓子入れ

minca外観

株式会社 藤木伝四郎商店

http://www.fujikidenshiro.co.jp/

「美しい日用の道具と
    作り手を訪ねて」

 伝統的な技術を活かしつつ、現代生活に合わせ新しくデザインされたもの。職人の確かな腕が生み出す、スタンダードで長く使い続けられる道具。
 ふるさとの手しごとと真摯に向き合い、作り手を応援するお店。
「あきた産業デザイン支援センター」のスタッフが、県内各地を走り回り、手しごとに関わる人たちを取材してきました。秋田の様々な手しごとの“今”をご紹介します。

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